秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
それから私たちは再び車に乗り込んだ。
「悠里。お前にホテル暮らしなんてさせられない。戻ってきてくれないか」
エンジンをかけた彼は、私の方に顔を向けて、そう言った。
「私……ホントは、すごく嫉妬しました。あんなにポンポン言いたいことを言える間柄の梶さんが、うらやましかった」
さっき、ふたりの会話を見ていてそう思った。
上司と部下、という関係から始まった私たちが、あんなふうに言いあえないのは仕方がないかもしれない。
でも、伊吹さんと梶さんの間になんの壁もないように見えて、私もああなりたいと思った。
「バカだな。悠里にそこまで言えていないとしたら、俺がお前のことが好きすぎるからだ。もし迂闊なひと言で悠里に愛想を尽かされたらと思うと、知らず知らずの間にブレーキがかかる」