秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「お前ってヤツは……」
彼はそう言うと自分のコートを脱ぎ、私に掛けてくれた。
「足が……」
「平気です。だから早く!」
彼が視線を落とした私の足は、ストッキングが無残に破れ、所々出血までしている。
「わかった」
彼は心配そうな顔をしながらも、私から離れていった。
よかった。間に合った……。
ホッとしすぎて頭が真っ白になり、思わず座り込んでしまった。
すると……。
「お客様、こちらへ」
「えっ? 大丈夫です。私は客では……」
「宮城コーポレーションの高畑様より、お客様のケガの治療をするように仰せつかいました。こちらに」
やっぱり彼は完璧な秘書だ。
「ありがとう、ございます」
時間がなかったのに、こんな手配までしてくれた伊吹さんの優しさに涙が出そうだった。