秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

それでも、やっぱり疲れてしまった。
今日は彼に甘えよう。


初めて彼に会ったときも、足を血だらけにしてたんだっけ。
帰りのタクシーの中で彼のコートを握りしめ、そんなことを考える。

成長してないな、私。


でも今頃きっと彼がポーカーフェイスで社長をサポートしているのだと思うと、なんだか誇らしい気持ちになって、思わず笑みがこぼれる。


会社に帰って二時間ほどして、伊吹さんは戻ってきた。
珍しくバタバタと秘書室に駆け込んできた彼は、真っ先に私のところに来てくれた。


「広瀬」

「大丈夫です。ご配慮、ありがとうございました」


彼の辛そうな顔を見るのが嫌で口角をあげてみせると、彼は「はー」と大きな溜息をついた。
なんだか心配をかけてばかりだ。
< 329 / 370 >

この作品をシェア

pagetop