秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

やがて伊吹さんが出ていってしまうと、聡さんは首を傾げた。


「はぁ。高畑さん、目の鋭さに磨きがかかってる……」


あはは。聡さんにはまったく非はありませんと言いたいけど、まだはっきりと交際をオープンにした訳ではないから言えない。

あれは嫉妬という代物かも。


「ま、しょうがないよね。仕事中は俺が広瀬さんを独占しちゃうんだし。でも、サイボーグの仮面、外させてみたいなぁ。もうちょっとなんだけどな」


聡さんはなんだか楽しそうだ。
やっぱり私たちの交際に気がついている……。

その日は聡さんの足を引っ張ることなく、なんとか業務を終えた。


「お先に失礼します」


伊吹さんよりひと足先に会社を出ようとすると、彼が追いかけてきて人気のない廊下で私の腕をつかんだ。


「聡さんと仲良くしすぎだ」

「そんなこと、ありません」


そりゃあ、今のところ円滑に業務がはかどっているけど、仲良くしているわけじゃない。


「いや。今晩覚悟しておけ。他の男なんて目に入らなくしてやる」


耳元で囁かれた言葉に唖然としていると、彼は忙しそうに去っていった。


怖い上司に恋をするなんて、思ってもいなかった。
だけど伊吹さんは私の一番の理解者で、一番の応援団だった。

そんな彼と恋ができて幸せ。
彼が背中を押してくれたおかげで、私は未来を見ることができている。
もちろん彼と同じ未来を。

でも、でもね?
優秀な秘書室室長の独占欲が、ちょっぴり強すぎて困ってます。

はぁ、これからどうする?


【END】

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