秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

決して広くない部屋には、ソファとローテーブルしかない。

温めたカツ丼をテーブルに置きながらそういうと、彼は私の目を真っ直ぐに見つめる。


「やっぱり広瀬がいないと困るな」

「えっ?」

「いや。仕事、残しておいてやったから、頑張れよ」


『残しておいてやった』って……。
月曜に出勤するのが怖い。


「食えそうか?」

「はい。いただきます」


高畑さんの顔を見たら、急にお腹が空いてきた。
私たちは床にクッションを敷いて座り、向かい合って食べ始めた。

箸を取りうどんをすすると、彼は私を見てうれしそうに微笑んだ。
いつもは見せない柔らかい笑顔に、鼓動が速まってしまう。


「食えるようになって、よかった」


まさか、そんなに喜んでもらえるとは。
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