秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
その日は、電話対応と社長のスピーチの原稿の下書きをしていたら、あっという間に十八時が過ぎていた。
「ただいま戻りました」
「お疲れさまです」
高畑さんが戻ってきた。
「社長はそのままご自宅にお送りした。原稿はできたか?」
社長の仕事は終わっても、高畑さんはまだ終わらない。
「はい。いかがでしょうか」
この瞬間はいつも背筋が伸びる。
一応文学部を出ている私は、文章を書くことが得意な方だ。
でも、こんなに大きな会社のトップが口にすることは、いい加減では困る。
その内容を精査するだけでなく、ひと言ひと言、言葉の使い方が間違っていないか調べながら、原稿を作った。
高畑さんは私から原稿を受け取ると、黙ってそれを読みはじめた。