秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
直立不動で待つこの時間は地獄だ。
今まで何度原稿を突き返されたことか。
今回は社内向けのスピーチだから、そこまで厳しくないと思ったけれど……。
「これでは弱い。トップに立つ社長には求心力が必要だ。あの人のためなら頑張ろうと思うような魅力的なスピーチができなくてはならない」
「はい。すみません」
社長はスピーチがあまり得意ではない。
こういうことはどちらかと言えば聡さんがうまい。
「未来の展望ばかりでなく、社員をいたわる言葉をもっと盛り込め。褒めてくれない人間についていこうと思うやつはいない」
なるほど……。
高畑さんの言うことには、いちいち頷かされる。
「わかりました。すぐにやり直します」
「いや、明日でいい。今日はもう帰れ」
「えっ?」
まだ十八時だし、いつももっと残業するのに。