《短編》時計仕掛けのカトレイヤ
ーカチッ、ゴーン、ゴーンッ
耳元で聞こえた秒針が時を刻む音、そしてお腹に響くような鐘の音が聞こえた。
『おはよう、カトレイヤ』
優しく、それでいて愛しむような声に導かれて、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
『おはよう、カトレイヤ』
そして、今度はハッキリと見える、優しげに下がる目尻に、白髪を一つに束ねた男性。
白髪といえど、歳は30くらいだろうか、とても綺麗で整端な顔立ちをしている。
『体の具合はどうかな、カトレイヤ』
少し首を傾げるその人は、モノクルをつけている。
それが、知性を漂わせているように思えた。
『あなたは……私は、誰??』
知識だけがある。
そして、現状が分からないという意味不明な状態。
不安でいっぱいになると、その人はニコリ卜笑みを浮かべた。
『私は、錬金術士、ヘルメス。そして君は……私が作り出した、時計仕掛けの女の子、カトレイヤだよ』
『あなたは……私を作った人……お父様?』
『あぁ、そうだよ』
また、優しく笑って、私の頭を何度も撫でた。
そう、この人……お父様が私を作り出した。
私は、やっと今の状態を理解する。
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