《短編》時計仕掛けのカトレイヤ
「なぁ、お前名前は?」
「私は……」
そこまで言いかけて、自分の名前を思い出そうと考える。
ふと、お父様の言葉を思い出した。
『おはよう、カトレイヤ』
そうだ、お父様は私をカトレイヤと呼んだ。
これが、私の名前……。
「カトレイヤ……」
「カトレイヤ……綺麗な名前だな。俺はカイ・リベルタ、カイでいい。あとは…時計職人をやってる」
私よりうんと背の高いカイは、どうしても私を見下ろすような形で話しかけてくる。
けれど、圧迫感を感じないのは、カイが小さくはあるが笑顔を向けてくれるからだろう。
「時計職人……時計を作る人??」
「あぁ、でも恥ずかしいが俺まだ修行の身でな。師匠からはこの時計台の時計の整備しか教わってない」
苦笑いで頭を掻くカイに、私は驚いていた。
「ここが、時計台?」
まさか、自分のいた所が時計台だったなんて…。
周りをキョロキョロとすると、カイは私の手をとる。