唯一息ができるのは、君の側だけだった
ミーンミンミンミンミンミンミン



「あっ」「あっ」



「セミだ!」「セミだ!」同時だった



2人して笑った



「今年セミ鳴くの初めて聞いたよ~」



セミの声を聞くといよいよ夏がきたって感じがする



そんなことを考えてたら蓮が「セミの声聞くと夏って感じだな」



同じことを考えてたことが嬉しかった



「うん。もうすぐ夏休みだもんね。」



「陽子はどっか行くの?」



「んー家族旅行くらい。今年は軽井沢の別荘かな。ママは海外行きたがってたけど。」



「ヤベーな!マジで金持ちじゃん。すげー。」



「そうなのかな?学校の子はみんなそんな感じだけど。蓮はどっか行かないの?」



「うちは全然そういうのないから。両親離婚してるし。親父は仕事してるか酒飲んでるかしかない人間だからさ。旅行に行くような余裕もなさそうだしな、俺んち。」



「そうなんだ、、、じゃあお母さんとは一緒に暮らしてないんだ?」



「そ。親父が酒癖悪いからさ、暴言とか暴力とか嫌になってお袋は出てったよ。俺だって早く出てーよあんな家。」



「そうなんだ、、、。じゃあご飯とかどうしてるの?」



「たまに親父の方のばーちゃんが来て煮物とかたくさん作って冷蔵庫入れておいてくれるけど、俺も作るよ。妹も中学生だから一緒に作ったりするしね。得意料理ハンバーグ!」



「へー!ハンバーグ!すごい!」



「質より量!のハンバーグだよ。豆腐とかもやしとか入れたりしてかさ増ししてる!って俺主婦みてー。ははっ。」



「すごいね!」このときの私の顔ってひきつってたと思う



うまく言葉を返せなかった



同い年で、こんな苦労を背負っている人がいるなんて、、、



蓮の瞳に落ちていた影はこれだったんだ



のほほんと生きてるくせに不満ばかりの自分がひどく子どもに思えた
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