いつも視線は君ひとり
──ガラガラ
「あっ…咲ちゃん。こんな時間まで残っていたのね…。」
二人が部屋に入ってから1時間が経っていた。
出てきた2人の表情はかなり動揺しているようで。
その姿にまた私の心臓は嫌に大きく鳴り始める。
「…………昴パパ、ママ。…昴、は……?」
昴は…どうなったの?
なんともないと。
そう言って欲しいと思ってしまう。
聞いたくせにその返事を怖くて怖くて仕方ない。
「あっ…えっとね……。
…落ち着いて聞いてね?昴はひかれた時、脳を強く打ちすぎたせいで…、
”記憶喪失”になってしまったの…。」
えっ…。
昴が…記憶、喪失…?
つまり、昴パパとママや私のことも忘れちゃったってこと…?
静かに告げられたその言葉に私の身体が、頭が動かなくなる。
「あのね、咲ちゃん。今回のことにあまり責任を感じる必要はないのよ。咲ちゃんが悪いわけでは決してないもの。
これからも今まで通り接してあげてね。…数日後には面会できるから、ぜひあの子の為にも来てあげて。
あと、ここは遠いし帰ると時間が遅くなるからうちの車に乗って。」
それから私は回らない頭の中、昴の家の車に乗せて貰った。