いつも視線は君ひとり


この車にも昴との思い出がある。


小さい頃、一緒にピクニックに行った事。


幼稚園に遅れそうになった時に一緒に行った事。


そう。


私と昴はいつも一緒だった。


でも、そんな日常を壊したのは私なんだよね…。


記憶喪失。


その言葉が重くのしかかってくる。


自分のしてしまった事の大きさ。


あの時、私がよく周りを見ていれば。


あの時、昴の呼び止めを無視していなければ。


あっ………。


また泣いちゃう…。


だめ、本当に泣きたいのは2人だもん。


私がここで泣いていい資格ない。


絶対、だめ……。


私は、前の席に座る二人に気づかれないように必死で涙を堪えた。
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