いつも視線は君ひとり

私は鞄を自分の席において、昴の席に視線を向けた。


昴は私が来たのを見ると、静かに教室を出た。


「あっ…えと皆おはよう…。」


皆に向けて挨拶したものの、誰もピクリとも動かなかった。


「…えっとね、昴ね、記憶喪失のせいで性格変わっちゃって…。だから仕方ないの…。気にしないであげてくれないかな?」


皆は私の問いに答えることも無く、私の顔を見ていた。


やっぱり、事故の原因が私なのにおかしいよね…。


でもその静まりを解いたのは杏莉だった。


「私たちは大丈夫だよ!!

ていうか、私たちより心配されるべきは咲でしょ!!

だっていつもなら仲良く二人で登校してたのに、今日は一人だったし。

さっきなんて咲見たとたん教室出てくし。

咲こそ大丈夫なの?」


そう言うと、他のクラスメイト達も。


「そうだよ!!咲ちゃんこそ大丈夫なの?」


などと、私に言ってくれた。


それを聞いて私は涙が出そうになった。


だって元々は私が原因で皆を傷つけた。


それなのに、こうして私の心配をしてくれているんだもの…。


「皆…。ありがとう…。私は大丈夫だよ!!」


それを言うのと同時に私の辛くて痛かった心が、楽になっていくのが分かった…。


なんて私は幸せ者なんだろう…。


こんな私を心配してくれる人がこんなにいるなんて…。




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