いつも視線は君ひとり


五月を過ぎ、少し日差しが強いと感じる朝。


暖かい空気が私の頬にふれた。


その日も私、向澤 咲(ムカサワ サキ)は、幼なじみの暁 昴(アカツキ スバル)と一緒に登校していた。


私と昴は家がお隣さん同士だ。


生まれた時からと言ってもいいくらい昔から一緒にいた。


家族ぐるみで仲良くしていて、毎年一緒に遊びに行ったりするほどだ。


だから、別に高校生にもなって一緒に登校することに対して何とも思ったことはなかった。


確かに小中学校にいたお調子者のクラスメイトからいじられたこともあったけど、特に気にすることもなかった。


だって目的地も一緒なのに、別々に行かなければいけない理由もなかったからだ。


だから、今更一緒に行くこと自体には何とも思わない。


しかし、隣を歩くのにはいつもドキドキしていたりする。


なぜなら、私は密かに昴に想いを寄せているから。


恋に落ちたのはいつ、とかそういうのはもう覚えてないけれど。


ずっと一緒にいて、昴の明るいとことか優しいとことかに強く惹かれたんだ…。


まだこの想いを昴には伝えてないけれど。


いつか昴も私にこんな想いをもってくれないかな。


少女漫画なら、幼馴染と恋におちるって定番じゃない?


…………なんて。


隣にいるとどうしても考えたりしてしまう。


とは言っても四六時中隣にいる訳ではない。


昴は顔も整っていて、成長するごとに女の子からの人気も高まっているんだ。


『学校の王子様』


なんて、それこそ少女漫画みたいなあだ名なんて今まで何回言われてきたことか。


だから学校とかではあんまり一緒にいることはない。


元々幼馴染でもなければ、明るくてクラスの中心的人物の昴とあんまり多くの人と話すのが苦手な私とでは関わること自体少ないし。


だから私にとってこの朝の2人だけの時間は特別なんだ。


特に騒ぐわけでもなく、落ち着いていられるこの距離が好きだ。


きっとこれからも続いてく、私の特別な時間。


そう、いつもと変わらないと思ってた。


そんな日、昴はいきなり私に質問してきた。


「…なあ。

咲って…好きな奴に告白したことある?」

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