笹に願いを
「そうだな」
「でも痛いよ・・・天野くん」
「ああ。俺も心が痛いよ」
「もう私、女じゃな・・」
「それでも、おまえは女だ。たとえ体から卵巣がなくなっても、おまえはおまえだ」
「あまのくん・・・」
「俺だってな、子孫残す種作れないんだぞ。だが俺は男だ。俺が俺であることに変わりはない。そうだろ？」

痛くない。これくらい大丈夫。
そう自分に言い聞かせることで、せめて岡部編集長や天野くんには、表面上だけでも私が元気だと思わせたかった。
余計な心配をかけたくなかったから。
でも、天野くんにはつい本音を出してしまう。
強がっていたいのに、ウソをつきたくないと思うから。
この人だったら大丈夫、私の全てを受け止めてくれるって思うから。

私は、片方の頬を天野くんのＴシャツに押しつけたまま、小さくコクンと頷いた。

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