笹に願いを
ただ私の名前を呼ぶだけでは、物足りなくなったのか。
スッと伸びた太い指を使って、天野くんが私を上向かせた。
彼は私の顎に軽く指を添えたまま、顔を近づける。
そして、私たちの唇が触れ合った。

天野くんは、キスをする合間に何度も「織江」と私の名を何度も呼んだ。
彼の囁き声は低く、そして甘く、時々切なく私の耳に響く。
そして彼に「織江」と呼ばれるたびに、私はこの人から愛されていることを実感する。

・・・好き。
彼に名前を呼んでもらうこと、彼に抱きしめてもらうこと。
彼に見つめられてドキドキすることも、彼を呼ぶことも、彼に名前を呼ばれることも、キスすることも、彼にキスされた瞬間に無精ひげでチクッとすることも、何気なく示す愛情表現のように触れ合うことも、全てが好きで、愛してる。

私は、天野くんのうなじと、短い髪に触れながら、自分の体をもっと密着させた。

・・・それでいて私は、ただ彼がそばにいてくれるだけで、満ち足りた気分になれる。
たぶんその気持ちは、彼がさっき言った「幸せ」なのだろう。

もし、本当に神様が存在するのなら、私の願いを聞いてほしいです。
この幸せを少しでも・・一日でも、一瞬だけでもいい、細く長く、たくさん感じさせてください。

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