笹に願いを
「おまえが逃げても俺はどこまでもおまえを追いかけるからさ、なくてもいいじゃないか」
「は?」
「逃げ場。それに、俺はおまえを離さない。おまえの方こそ、俺が決めたこと忘れてんじゃねえよ」
「はあ?忘れてなんか・・」
「俺は、おまえのこと愛してんだぞ。同情せずにはいられない。できることなら俺が代わりたい。でもさ・・・できねえんだよ。実際。ちくしょう!って思う。何もできねえ自分に苛立つ。それでも俺は、現状から逃げない。そう決めたから。それが、俺がおまえにできる数少ないことの一つだから。俺がおまえにしたいと思うことだから。おまえから離れない、おまえを離さないと決めたのは、俺がそうしたいから。織江・・おまえを愛してるから」
「あまのくん・・・」
「なあ織江。人に与えられた寿命は、みんな平等じゃない。だがいつ死ぬのか、それは自殺でもしない限り、誰にも分かんねえんだよ」と天野くんに言われて、私はハッとした。

< 173 / 224 >

この作品をシェア

pagetop