笹に願いを
そっと伸ばした私の右手を、お義母さんが優しく握ってくれた。
・・・痛くない。温かくて、気持ちいい・・・。

「なあに?織江ちゃん」
「わたし、あれ・・・このまえ、お義母さんが持ってきてくれた、カレー。おいしかったな・・・」
「じゃあまた、作って持ってくるわ」

優しく微笑みながらそう言ってくれたお義母さんの目には、涙が浮かんでいた。
鼻をすする音・・お義父さん。
義彦も、泣いてるのかな・・・。

今は食欲、全然ないけど、あのカレーは本当に美味しかったから、また食べたい。

「カレー、明日持ってくるから食べてね」
「はい」

でも、お義母さんと交わしたささやかな約束は、叶えられなかった。

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