笹に願いを
・・・これは、夢・・・?
義彦と一緒に仕事をしている私がいる。
彼と話しながら時々笑っている私は、元気な姿だ。
二人で晩ごはんを食べに行った。
居酒屋とかファミレスとか・・・一昨年の私の誕生日には、ホテルのレストランで和食フルコースだったよね。彼は大奮発してくれた。

去年は一緒に長崎までお墓参りに行ってくれた義彦がいる。
「結婚記念日」と書かれた右2つ横に、「治療開始」と書かれた手帳を見て、しかめ面をしている私がいる。

朝起きて一番最初に義彦の顔を見ることができる幸せ。
「天野くん」「何、天野夫人」って、笑いながら何度かやりとりしたのも、良い思い出だ。
低い声、細身な筋肉質の硬い体。人懐っこい笑顔。
彼とキスしたときに感じる、無精ひげのざらつき。
彼に抱きしめられたときに感じる温もり。
彼の手は大きくて、ゴツゴツしてるのに、いつも優しく私に触れてくれた―――。

私は彼に守られていた。
私は、彼に愛されていた。
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