笹に願いを
31 天野義彦視点&最終話
「う・・・」
「先生・・」
「ご両親を呼んでください」
それから30分弱で、俺の両親が病室に到着した。
泣きながら「織江ちゃん」と静かに呼ぶ両親に、織江は必死に答えようとしていた。
だが、もういい。
いいんだ。
「・・・御臨終です」
「せ、せんせい。織江・・妻はもう、痛くない、っすよね。も・・ぅ苦しまなくて、いいんですよね」
「はい」
「よかった・・・。おりえー、よくがんばったな。ホント、よくがんばった」
もう織江が痛がらないことが分かったから、俺は寝ている彼女をギュッと抱きしめて、何度も髪をなでた。
おまえが濡れちまうくらいボロ泣きしてるが・・・今だけ。ごめんな。
「織江さんは最期まで気高い生き方をされました。死に顔も穏やかで、本当に・・織江さんらしい」と言ってくれた須藤先生の声は、少し涙ぐんでいる。
最後まで、いや、亡くなってからも、織江のことを丁重に扱ってくれるこの人が主治医で、本当に良かった。
2018年7月20日、午前11時34分。
俺の妻・織江は息を引き取った。
「先生・・」
「ご両親を呼んでください」
それから30分弱で、俺の両親が病室に到着した。
泣きながら「織江ちゃん」と静かに呼ぶ両親に、織江は必死に答えようとしていた。
だが、もういい。
いいんだ。
「・・・御臨終です」
「せ、せんせい。織江・・妻はもう、痛くない、っすよね。も・・ぅ苦しまなくて、いいんですよね」
「はい」
「よかった・・・。おりえー、よくがんばったな。ホント、よくがんばった」
もう織江が痛がらないことが分かったから、俺は寝ている彼女をギュッと抱きしめて、何度も髪をなでた。
おまえが濡れちまうくらいボロ泣きしてるが・・・今だけ。ごめんな。
「織江さんは最期まで気高い生き方をされました。死に顔も穏やかで、本当に・・織江さんらしい」と言ってくれた須藤先生の声は、少し涙ぐんでいる。
最後まで、いや、亡くなってからも、織江のことを丁重に扱ってくれるこの人が主治医で、本当に良かった。
2018年7月20日、午前11時34分。
俺の妻・織江は息を引き取った。