笹に願いを
『悲しみにとらわれながら生きないで。「悔いなく生きる」が信条であるあなたのことだから、たぶんそれはないと思うけど。
また、心から愛する誰かを見つけてください。私を愛してくれたように。また誰かを愛することを恐れないで。幸せでいて。』

おまえと一緒に過ごした日々に後悔してないし、逃げないと決めたこと、おまえと結婚したことは、俺の人生最良の選択だった。
最期の瞬間までおまえのそばにいられたことは俺の喜びだったが、痛みに苦しむおまえの姿を見るのは正直辛かったからさ、おまえが死ぬことで痛みから解放されて、俺はホッとした。
おまえと肉体的に別れたことが辛い、悲しいと思い始めたのは、おまえが亡くなってから1ヶ月程経った頃からだ。
だがおまえの言うとおり、確かに俺は悲しみにとらわれてはいない。
できる限りおまえのそばにいれたと言いきれるし、悔いなくおまえと一緒に過ごすことができたとも思ってるからさ。
だからな、織江。おまえの死から15年経った今でも、「心から愛する誰か」は見つからない。
15年経っても、おまえが俺の心にいればそれでいいと思ってる。
満足してるんだ。十分幸せなんだ。


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