笹に願いを
「織江!」

この声は・・・。
ふり向かなくても天野くんだと分かる。
ごく一般的な男性の低音なのに、なぜか彼の声を聞くと、私の鳩尾あたりがざわめくんだよね・・・。

「・・・天野くん」
「これから一緒にメシ食べに行かないか?“銀河警察隊”のコミックもらった礼を兼ねて、俺の奢りだ!」
「ごめん。ちょっと・・・」
「先約?」
「ううん。それはないんだけど・・・外で食べようって気にならなくて」
「そっか」
「ごめんね」
「いいよ。また今度な」

「今度」と聞いて、切ない気持ちが顔に出てしまったかもしれない。
でも私は、極力笑顔で、天野くんに頷いた。
それから私たちは2・3秒の間、無言で見つめ合った。
先に沈黙を破ったのは、私の方だった。

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