笹に願いを
あぁ、数秒間の沈黙の空気が、なんだか重たく感じる。
きっと彼も感じているだろうな・・・。
ごめん、天野くん。
せっかく来てくれたのに・・・でも今の私は、自分のことで手一杯な精神状態で、他の人を思いやる心の余裕なんて、全然持ち合わせてないよ。

「あの。わざわざ来てくれてありがと。でも私は無事だから。ホントに。大丈夫・・・」
「行っていい?」
「・・・え?」
「おまえんちに入れてくれないか」
「え」

・・・もしかしてこの人、さっきの沈黙、全然重たく感じてなかった?
今夜は余計にひとりで過ごしたいという私の気持ちが、全然通じてない・・・?

受話器を握りしめる私の手に一瞬力がこもった上、眉間にしわが寄ってしまった。

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