笹に願いを
「誰かいるのか」
「あ・・ううん。いない、けど・・・ごめん。もう夜遅いし。天野くん、明日は仕事でしょ?」
「それなら心配ご無用だ。おまえんちから出勤する。そのために海彦で来たから」
「だっ・・・だから、そうじゃなくて。もう・・・・・・わたしは、ひとりでいたいのよ!誰にもいてほしくないの!こんな失礼なことを正直に言わせな」
「いで!」と最後まで言いきる前に、天野くんが「眠れないんだ」と言った。

淡々とした彼の口調は、カッとしていた私の心を静める効果があった。

「・・・え?」
「眠れないんだ。おまえのことが気になって今夜は眠れそうにない。たぶん、おまえもいろいろ考えて眠れないんじゃないかと思ってさ」
「あ・・・」

当たってる。その通りだ。
やっぱり、4年も一緒に仕事をしているパートナーには、何でも分かっちゃうのかな。
でも・・・だからこそ、今夜はひとりで過ごしたい。
誰にも会いたくない。一番好きな天野くんには尚のこと会いたくないって・・・分かってよ。

じゃないと私、暗く醜い部分をあなたに見せてしまうかもしれない。

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