笹に願いを
「じゃましやーっす」と言いながらリビングに入った天野くんに、私はソファを指さしながら「そこに座って適当にくつろいでね」と言った。

「ねえ天野くん。もしかしておなかすいてない?」
「いいや。晩メシ食べてきたから」
「よかった。明日から入院だからさ、実は冷蔵庫の中空っぽで・・あ、なんか飲む?って言ってもお酒類とかジュースもないんだけど」
「今はいいよ。腹減ったら近くのコンビニでなんか買ってくるし、喉渇いたら水道水飲むから気にすんな」
「あぁ、そう・・?」
「それよりおまえは?晩メシ食べたか?」
「うん・・・。正直言うと、おなかはすいてるんだけど、食欲はあまりなくて。だからお茶漬け食べた」
「そっか」
「なんか俺さ、“心の赴くままに”って言ったら聞こえはいいが、結局衝動的に来ちまって。おまえのこと考えなくてごめん」
「ううん」と私は言いながら、顔を左右にふって否定した。

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