笹に願いを
「わざわざ来てくれてありがとう」
「おまえんちは社より近いからな。思ったよか時間かかんなかった」
「もう、天野くんったら・・・来てくれて嬉しいっていうか・・・ホントはね、ひとりで過ごす方が安心するって思ってた。いつもそうだから。でも誰かがいてくれるのも心強いね」
「“誰か”っつーより、相手が“俺”だからそう思うんだよ」

ついさっき「ごめん」と謝った時のしおらしい口調とは打って変わって、自信満々な天野くんの言い方に、私はクスッと笑いながら「そうだね」とだけ言っておいた。
同時にテレビから笑い声が聞こえてきて、今頃つけっぱなしにしていたことに気がついた。

< 56 / 224 >

この作品をシェア

pagetop