笹に願いを
彼が両手で自分の頬を上下に撫でた。
あぁやっぱり、天野くんも眠たいんだ。
あれは天野くんが眠気覚ましによくする仕草だから・・。
と思いながら、私は密かに何度目かのあくびをした。

できれば朝までしゃべっていたかったけど、そろそろ寝る時間かな、お互いに。

天野くんは、右手で顎を撫でながら、「おりえー」と私の名前を呟いた。
無精ひげのざらつく音が、かすかに聞こえる。
呟き声も眠そうな響きだ。
「はい?」と返事をした私の声も顔も、彼には眠た気に見えているに違いない。

「寝よっか。眠いんでしょ?天野くん」
「うーん・・・少々。認めたくないが」
「気持ちは分かるけど、少しは寝ておいたほうがいいよ。天野くんは明日仕事だし」
「ああ・・」
「じゃあ天野くんはベッド使って。私はソファで寝るから」
「嫌だ」
「天野くんの方が私よりも体大きいんだからベッドで寝なさい。大体、このソファの長さだと、足か頭がはみ出しちゃうでしょ?」
「俺は寝ないぞ」
「ちょっと。ここまで来て何遠慮してんの?」
「してねえし」
「じゃあ寝る前の不機嫌ってやつ?」
「いーや。俺だけベッドで寝るのは嫌だ」
「え・・・?」
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