笹に願いを
12
「欲しかったのか?」
「うん・・・正直言うとね、30過ぎたあたりから子どもが欲しい、子ども産みたいって思い始めて。でも私、シングルマザーになる気はないし。そもそも相手すらいないし。厄年の頃はかなり焦ってたんだよ、実は」

あの頃の気持ちを思い出した私は今、天井に向かって微笑む余裕がある。

「10代・20代の頃に何となく思い描いていた理想と現実が全然違うってことに焦ってた。30代ならもう結婚してて、子どもは2人くらいいるはずなのに。こんなはずじゃない、みたいな。でも・・・違うんだよね。相手が好きだから、愛してるから結婚するんであって、子どもが欲しいから結婚するんじゃないんだよね。って、そういう恋愛の基本的なことをやっと思い出して。それからは、子ども産んでも産まなくてもまぁいいやって思えるようになった。その前に相手見つけろって話なんだけどね。とにかく、そんな感じだったんだけど、これでもう完全にふっ切れたっていうか。いい意味でスパッと諦めついた」
「そっか・・」
「万が一、これから先、子どもを授かることができたとしても、育てるのが大変。体力的にね。それに一緒にいられる時間もあまりない。たぶん。どっちにしても、それはもうありえない話」

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