笹に願いを
「・・・受け入れてる、よ」
「だから、“もっと”って言ってんだろ。俺、基本的に欲張りだから」
「うぅ・・・わたしだって・・・」

呟き程度の声だったけど、かなり近くにいたから天野くんにも聞こえてたみたいで。
彼はクスクス笑ってる。

「家着いたらメール送るぞ」
「うん。待ってる」
「あ。今のセリフ、なんかジーンと来た」

穏やかな笑みを浮かべた天野くんは、私の肩に置いていた右手を、私の腕へそのまま撫でるように移動させて、たどり着いた私の左手に、大きな右手を重ね置きした。

「気をつけてね」
「ああ。じゃあな。明日」

天野くんは右手で私の左手をギュッと握ると、そっと手を離した。
私は彼の背中に向かって、「おやすみなさい」と言った。

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