相原くんは秀才。
「見てない?ねぇ、見てるって!」
「だからどうしたの?」
慌てふためいている麻美に、勝手に自分は夏バテだと診断した私はいやいや振り向く。
────────バチッ
その瞬間、重なる視線。
軽く片手をあげて私を見る相原くんに、不意打ちで心臓をえぐられかけた私は咄嗟に平常心を装うけれど、
「……日菜!」
「っ、?!」
次の瞬間、相原くんの口から飛び出したワードに耳を疑った。
今、"日菜"って言った?
それは…日菜子の日菜?
てか、なんでこのタイミングで私のこと呼んだの!!みんな見てるじゃん。
試合がちょうど終わったらしい相原くんは、私の名前…と思われるフレーズを口にした後、少しだけ私たちの方へと近づいてきて、
「ジュース、1口ちょうだい。
暑くて死にそう。」
Tシャツをパタパタと仰いで、見るからに暑そうな顔で訴えてくる。
「……ほ、ほれ!日菜子!早くあげなよジュース!」
「…へ、あ。
飲みかけでもいいなら、あげる。」
隣から麻美に急かされながら、変に緊張している私の手は…暑さでなのか、緊張でなのか、じっとり汗ばんでいる。
「日菜のならいいよ、」
「っ、……投げるよ?」
いちいち私の胸をギューッと掴みたがる相原くんは、私の言葉にコクリ頷いて、
───────パシッ
「さんきゅ。」
ナイスキャッチして笑った。