相原くんは秀才。
あれから、放課後までの間に
『相原 隼人と浅野 日菜子は付き合っている』
こんな噂が広まるのに時間はかからなくて。
……それもこれも全部、
「相原くんのせいだよ。」
「あ?」
隣で化学のワークにシャーペンを走らせるこの男のせいなのは間違いない。
のに、この憎たらしいほどに強靭な精神。何を言っても今の彼には化学のワークしか見えていないようだ。
「あー、もう!分かんないし。」
見つめる自分の数学のワークは、やっと6ページ目が終わろうとしているところで、
この3日間で、我ながら良くここまで出来るようになった!えらい!頑張った!…もう、辞めよう?
と、自分への甘さが滲み出てきている。
「………浅野、うるさい。」
「……昼は日菜って言ったくせに。」
私の小さくボソッと呟いた声なんて、もはや集中しきっている相原くんには聞こえていない。
その集中力!!分けてくれ!!