相原くんは秀才。
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ミーンミーンミーン
相原くんの部屋には2度と行かないと、そう決めたあの日から2日。
「あ、長谷ヤン!!」
「お、ヒヨコ…じゃなくて」
「日菜子です!」
"あ、そうそう"なんてとぼけたフリする長谷ヤンは、絶対に私の名前を記憶している。
わざわざヒヨコ呼ばわりしたいがために、毎回よくも飽きずにこのやり取りを繰り広げられるもんだ。
と、感心しつつ
「それより長谷ヤン。
私に数学、教えて欲しいの!」
本題はこっちなんだな。
廊下の壁にもたれながら、私を見下ろす長谷ヤンがあからさまに眉をひそめた。
「……やだ。」
「それでも教師ですか?それとも、夏休み…私と過ごしたいとか?」
いつもの長谷ヤンが言いそうな言葉を冗談めかして呟けば、
「…んー、そうだな。俺はそれも有りかな…って思ってたんだけど。」
フッと小さく笑いながら、私の髪の毛を指に巻き付けて遊び始めた長谷ヤンに、少しだけたじろぐ。