今日も来ない、きみを待ってる。
「過去に、何があったんですか」

私がそう言うと、彼は思いがけない一言に驚いているようだった。

「なんでそんな、どこか遠くを見るような目をするんですか」

彼の瞳に何が映っているのかを知りたかった。
こんなにそばにいるのに、心は遠い。
近くて遠くて、こんなにももどかしい。

彼とは付き合っていない。
私と彼では6歳も離れている。
恋愛経験ゼロのただの女子高生が、経験豊富で大人な彼を理解するためには、ただただぶつかっていくしかないと思った。

「まさか聞かれるなんて思わなかったよ」

彼はビルの明かりが光る夜の景色を背に、いまにも吸い込まれてしまいそうな儚い笑顔で笑った。

「るいちゃんを見くびってたよ」

そう言うと彼は半分ほど短くなった煙草の火を消し、近くの空き缶の中へ放り込む。
そしてゆっくりと口を開いた。

「…前付き合ってた彼女にさ、二股されてたんだ」

二股…。

私はなにも言わずに、彼の話に耳を傾ける。

「結構長く付き合ってて彼女のこと信じてたからショックでさ、その時から女はもう信じられないんだ」

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