今日も来ない、きみを待ってる。
一番後ろの席の真ん中。
真っ暗でつまずきそうになりながら、なんとか階段の一番上へとたどり着く。

上映されてからすでに一月は経っている映画のため、見に来ている人は少ない。
私の席がある一番後ろの列は誰も座っていなかった。
私は指定された9番の席に座る。

もうすでに本編が始まっていて、スクリーンには主人公の女の子とその彼氏が楽しそうにデートをしている姿が映し出されていた。
主人公と彼氏を、私と彼に重ねてみる。

隣を見ると、彼が座るはずだった10番の席はぽっかりと空白ができている。
携帯には、まだ連絡は来ていない。

彼はきっと来ない。
私と一緒に居たくないのかな。
この間彼の心に踏み込んでしまったことが良くなかったのだろうか。

彼に近づけたと思ったのに。
そう思っていたのは私だけだったのかな。

彼は踏み込んでほしくなかったのに、私が無理に聞き出したから傷つけてしまったのかもしれない。

それとも、彼が女性を信じられないのを私は知っている。
だから私は試されているのかもしれない。
私が信用できる人物かどうかを。


映画が進むと主人公と彼氏はすれ違いはじめ、終盤には主人公は別れようと告げる。
二人は別々の道へと歩んでいくところで幕を閉じた。

私たちは、このカップルのように別々の道へと進むのかな。
そもそも付き合ってる訳じゃないのに、何を考えてるのだろう…ばかだな。

映画が終わり携帯を開くと、彼からメールが来ていたけれど、その日は返信しなかった。
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