今日も来ない、きみを待ってる。
私は学校帰りの午後7時頃。
改札を通るため私は、スクールバッグから定期を取り出す。
通ろうとしたその時、私は後ろから誰かに声をかけられた。

『ねえ、そこの制服のきみ』

自分の事とはわからず改札を通ろうとすると、スクールバッグを引っ張られる。

『ちょっと待って』

『きゃっ』

いきなり後ろから引っ張られ驚いて振り向くと、若い黒髪の男の人が立っていた。
背はあまり高くなく半袖の白いシャツに、黒の長いパンツを履いていた。

『ハンカチ落としたよ』

男の人は、ピンクのハンカチを私に差し出す。

『本当だ、ありがとうございます』

私は受け取って自分の鞄にしまう。
ふと男の人のほうをみると、左胸のポケットに名札が付いていることに気づく。

『エクセレントコーヒー副店長、麻倉(あさくら)…』

私が名札に書かれている通り読み上げると"麻倉さん"は、はっとした顔で左胸を見た。

『わっ、名札つけたままだった』

"麻倉さん"は慌てて名札をはずし、ポケットにしまう。

『この近くのカフェの副店長さんなんですね』

エクセレントコーヒーは全国展開しているチェーンのカフェで、知らない人はいないほど知名度は高い。

『うん、そうなんだ。君に指摘されなかったら、電車で個人情報をさらすところだったよ』

『大袈裟ですよ。学生なら、制服に名札つけてる子たくさん見かけますよ』

『それって危ないと思わない?今は誘拐とか多いし、気を付けなきゃね』

"麻倉さん"は、ははっと笑う。
笑顔が素敵な人だと思った。
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