今日も来ない、きみを待ってる。
数日後。
私はエクセレントコーヒーの店前に来ていた。

その日は高校も休みで、制服ではなくて私服。
清楚な雰囲気の白のワンピースにした。

麻倉さん、今日居るかな?
わたしのこと覚えてるのかな?

割引券をもらってから、カフェに行くか行かないか迷い続けた。
もう一度会いたい。
だから私は行くと決心した。

駅で少しだけ話した、ただの女子高生の顔なんていちいち覚えていないかもしれない。
もし覚えてなかったり居なかったりしたら、何も飲まずに帰ろう。

そう覚悟した上でカフェに入店した。

『こんにちは!』

カウンターの店員さんが、爽やかな笑顔で私を出迎えてくれる。
何人か店員さんは居たが、麻倉さんらしき人は見当たらない。

いない、か……

諦めて入ってきたドアの方へ引き返そうとしたとき、私は誰かとぶつかってしまった。

『わっ、すみませ…』

言い切る前に、相手の顔を見た私は言葉を詰まらした。

『こちらこそすみません』

ぶつかった相手は麻倉さんだった。
この前と同じ白いシャツと長いパンツに、今日はエプロンもしていた。

『大丈夫ですか』

『あ…』

"麻倉さん"と呼ぼうとして、私は言葉を飲み込んだ。
麻倉さんの様子から、私のことを覚えてないみたいだと察したからだ。

『だ、大丈夫です…失礼します』
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