今日も来ない、きみを待ってる。
『正直言うと、ぶつかったときはるいちゃんだってわからなかったんだよね。ほら、この前は制服だったでしょ』

ああ、そういうことか。
確かに今日は私服だし、髪も後ろにまとめてポニーテールにしている。
しかもこの前と違って少しお洒落をしてきたから、会うのは2回目だし無理もないなと思った。

『ごめんなさい…泣いたりして。恥ずかしいですよね』

すれ違う人たちは、泣いている私をちらちらと見ている。
これじゃあまるで、周りからは麻倉さんが泣かしたように見えてしまう。
止めようとしているのに、涙は止まる気配をみせない。

『ううん、むしろ嬉しいよ』

『え…?』

意外な言葉に驚き、私は麻倉さんの顔を見る。

『だって俺に会えて泣くほど嬉しかったってことだよね』

麻倉さんはそう言ってにこっと笑う。

『え!?』

私は顔から火が出るほど真っ赤になるのがわかった。
私の気持ちを見透かされたような気がして恥ずかしい。

『あれ、違った?』

『そ、それは…!』

『俺は嬉しかったんだけど』

『…!?』

麻倉さんが私と同じ気持ちだったなんて。

特別可愛いわけでもなく、美人なわけでもない。
お洒落でもなく、化粧っ気もない。

でもそんな私を麻倉さんは覚えていてくれて、いま再び再会して笑いかけてくれている。
それだけで私はたまらなく嬉しくて、今までにないようなときめきを感じた。

麻倉さんに惹かれている。
そう自覚した瞬間だった。

『また今度、カフェに行ってもいいですか』

これで終わりにしたくない。
そう感じた私が咄嗟に口にした言葉だった。

そう言うと、麻倉さんは嫌な顔せずに笑顔で頷いた。
いつの間にか涙は止まっていた。

そして現在に至るのだ。
< 7 / 26 >

この作品をシェア

pagetop