【短】ソルト男子にはシュガーを。
「はぁ…はぁ…着いた…」
息が上がって肩で呼吸する。
額にはうっすら汗が浮かび、こんなことなら走らなければ良かったと思った。
好きな人に会う時にはやっぱり汗なんかかいていたくない。
手の甲で汗を拭って、椎名くんの部屋のドアをノックした。
──コンコン
「はい?」
中から椎名くんの少しかすれたような声が聞こえてきた。
それだけで何故かきゅーんと胸が締め付けられる。
「あの、村本 梨沙です!!お、お菓子を」
──ガチャ
まだ喋っている途中だというのに開いたドアの向こうには顔を歪めた椎名くんがいた。
まるで“また来たか”と言いたそうな。