オトナの恋は強引です!
夜9時。
Dragon &Tiger。

扉を開けると、結構賑やかに混雑している様子だ。
(今日は金曜日だったね。)
この間近所の洋食屋にいた少年と、
タイガさんの奥さんの悠理ちゃん(ゆうりちゃん。33歳。小さくて細くしっかり系。)に迎えられる。
「サクラちゃん!」と悠理ちゃんは私をギュっと抱きしめる。
おおっと。ど、どうしたの?

「コムギちゃんがサクラちゃん戻ってこないかもって言ったから。」と涙目だ。
「え、えっと…。」…そう言われると、言葉に詰まる。
「捕獲して参りました。
もう、どこにもいかねーよな。サクラ。」とドラゴンは私の顔を見る。
私が慌ててコクコクうなずくと、
「良かったあ、
サクラちゃんがいないと、竜二さんは使い物にならないんだから。
もう、大変だったよ。」と笑う。
「そんなことねーだろ。」とドラゴンが機嫌の悪い顔を見せながら、
私をカウンターに座らせる。
「気がついてないんだ。
女の子に声かけられても、機嫌が悪いし、
注文もしょっちゅう間違えてたでしょ。
ハラハラしたよ。それに、
突然、バイトを雇って、どっかに行くし。」と呆れた声で笑う。
「竜二さんが戻ってきたら、もしかして、俺ってもうクビ!?」
と少年が私の前に水のコップを置く。
「夏の間はバイトしろよ。
俺の部屋にサクラを引っ越しさせるから、もう少し、忙しい。」
とカウンターの中に入ったドラゴンが笑う。
「良かったー。俺、新しいボード予約しちゃったんだよね。
俺、祐介(ゆうすけ)19歳で、大学1年。
竜二さんにサーフィン教わってんだ。
よろしくサクラちゃん。」と私と握手する。
私は握手しながら、
「私、引っ越すの?」とカウンターの中を覗くと、
「もう、捕まっといて。俺たち大変だから。」
とタイガさんが私の好きなアジのマリネと、しらすがかかったピザを持って来た。
「美味しそう!」と私が声を出すと、
「サクラ、明日から荷物運ぶぞ。」とドラゴンが笑った声でピザをつまみ食いする。
「かっ、考えておく。」と赤くなると、
「考えるな。」
「いいから、引っ越せ。」
「お願いだから、引っ越すって言って。」
「往生際が悪いぞ。」
「これ以上、大変なのは嫌だ。」
とタイガさんや、悠理ちゃんや、ドラゴンに口々に責められてるような気がする。

「わ、わかりました。」と返事をすると、
ホッとしたように自分の持ち場に戻って行った。

えーと。
それって、同棲ですか?

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