オトナの恋は強引です!
ここのサロンの先生は、結構有名なパティシエ。
荒木 (あらき )さん。30代の男性。
ホテルでパティシエをしているっていう事だ。
習っているお嬢さんたちは、ニコニコシェフの手元を見ているだけで、
グループにわかれて作る時も、アシスタントの人がほとんど作ってしまう。
(もったいない。)
私のように、どおしてもモノにしようと食い付いてくる生徒は
珍しかったらしく、
「ガッツがある生徒さんはは久しぶりだね。」と笑って、
「店でどんなのを出したいの?」と聞いてくれ、私の作りたいと思っている、
素朴なパイや、プリンや、パンナコッタや、クリームブリュレ、アイスクリームなんかを
プログラムに入れてくれた。

嬉しい。
「ここに来てるお嬢さんたちは、ここで何を作っても良いんだよ。
多分、家で作らないんだから…お手伝いさんだっているし、
教養と人脈作りのためのお菓子教室。
パーティなんかでは僕等が雇ってもらえる。
営業の一環です。」とにこりとした。
「わ、私は営業の邪魔をしていますか?」と慌てて言うと、
「いいよ。僕もちゃんと生徒さんに教えるって本当は思ってるんだから。
僕は高いお給料をもらってるし、君は高い授業料を払ってる。
時間内なら、僕にいくらでも聞いて。」と笑ってくれた。

私は習ったお菓子を必ず家に戻ってから、何度か作り、
(お手伝いさんが、興味津々で私のお菓子作りを見ている。)
教室の時間が終わって、アシスタントの人が片付けをしている時に
荒木さんに試食してもらい、コツやアドバイスをもらったりした。

荒木さんはいやがったりせず、素人の私の失敗を楽しんだり、
バリエーションのつけ方も、出し惜しみせず、親切に、詳しく教えてくれ、
ちょっとした、個人レッスンみたいになった。







< 66 / 80 >

この作品をシェア

pagetop