オトナの恋は強引です!
2月に入った。
お菓子教室は順調だ。
始めは上手くできなかった、パイ生地作りにも慣れて、
バレンタインにはお店に勤める人達にチョコレートパイを作って、
休憩時間に食べてもらった。
ささやかな感謝の印だ。

みんな美味しいと言ってくれたけど、
ドラゴンは
「なんでみんなと一緒な訳?」と家で同じものを渡したら、顔をしかめた。
「だって、これしかできないもん。」と言ったら、ため息をつき、大きな口で噛み付いた。
「パイ生地、上達して来てる。」とドラゴンはちょっと驚いた顔をする。
「でしょう。荒木先生にも褒めてもらった。」と自慢げに言うと、
「せんせーが先に食ったのかよ?」と不機嫌な顔を見せるので、
「そりゃそーでしょー。自分だけが食べるんじゃないんだから。
人にプレゼントしていい出来か聞かないと。」と呆れた顔を見せると、
「フツーの女はパティシエに教わってからプレゼントしないだろ。」と更に機嫌の悪い声を出す。
「いいでしょ。前回のカスタードクリームを試食してもらうついでに渡して、
味見してもらったんだから。」と、口喧嘩になった。
なんで突っかかってくるかな。
ムウーと黙り込んだドラゴン。
バレンタインだっていうのに機嫌が悪くなると困る。
せっかく初めて手作りしたのに。と思って、

ドラゴンの膝に座り、チョコパイをフォークで口に運ぶ。
「あーん。」と言ってやると、ドラゴンはちょっと機嫌を直し、
「俺は特別扱い?」と口を開けてパイを頬張る。
「そうですよ。」と頬にキスもサービスすると、
「美味い。」とにっこり笑って私を抱きしめた。

やれやれ。
手のかかるオトコだ。



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