オトナの恋は強引です!
「なんだか機嫌が良いんだね。」と私が顔をみると、
「わかるう?明日海が荒れそうなんだよね。」とドラゴンは嬉しそうだ。
なるほど。
サーファーにとって
湘南の海は穏やかなので、少し荒れた方が楽しいらしい。
ドラゴンはほとんど毎朝海にいるみたいだし。
「でも、気をつけてね。」とコムギが心配そうな声をだすと、
「オーケー。俺の腕を信用しな。いや、足かな?」とクスクス笑ってカウンターに戻っていく。
まぁ、13歳から波に乗っているらしいから、上手いんだとおもうけども…。


4年前、偶然ドラゴンが波に乗るのを見て、カッコイイと思った。
朝、散歩をしに砂浜を歩いたら
たくさんのサーファーが海にいた。
赤いウェットスーツのヒトが上手い。
小さな波も上手く捕まえ、ボードに立つ。
眺めていたら、ひときわ大きな波がやって来て、
誰より上手く捕まえた。
おもわず、小さく手を叩くと、
「サンキュー!」と見つかって手を振られてしまった。
それがドラゴンだった。
私は慌てて、逃げ出したけど、
その何日か後にも海岸沿いを歩いたら
赤いウェットスーツは波に乗っていた。

やっぱり上手いな。
今度は見つからないように
道路から少し眺める。

休みの朝、散歩する時にちょっとだけ足を止め、
赤いウェットスーツを眺めるのが楽しみになった。



1人暮らしになったばかりの私は
きっと、いつ行ってもそこにいる
赤いウェットスーツが知っている人の気がして、
嬉しかったのだと思う。







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