嘘つきは泥棒の始まり!
・泥棒されました
◯
:
・
「ねえ、桜ちゃんー……」
机につっぷしている桜ちゃんの体をゆらゆら揺らす。
大声で彼を呼ばないのは、彼がヘッドフォンをしているからだ。
「ん……? あ、みすずだ」
ゆっくりと頭を上げヘッドフォンを外した桜ちゃんは、ぱっちりした二重の目をこすりながら、わたしの名前を呼んだ。
「もう桜ちゃん…帰ろうよ……」
「えー……」
寝ぼけている桜ちゃんのカバンを肩にかけ、彼の手首を引っ張る。
すると、友達のこよりちゃんが控えめにくすくすと笑った。
「水鈴(みすず)、相変わらず桜庭くんと仲良しだね」
「そうかな、普通だよ?」
「なわけないでしょう? 付き合っているんだから。……まあ噂だけど」
そう、私と桜ちゃんはお付き合いをしている、ということになっている、らしい。
ちなみに、本当は付き合ってなどいない。
普通にちょっと関わりが長くて仲のいい友達だ。
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