嘘つきは泥棒の始まり!
彗ちゃんの手に力が入って、さっきよりも強く肩を掴まれる。
少しだけこの場に居るままでいいかな、と思いながら桜ちゃんを見上げて、私はその思考を捨てた。
だって、特に何も思っていないような無表情顔でいたから。
ほら、桜ちゃんにとっての私なんてこんなもん。
「ごめん、彗ちゃん。私ちょっと用事があるから」
私は体をひねって彗ちゃんの手を離して、帰り道を走った。
「水鈴!」
走っていく私の背中に声をかけてくれたのは、桜ちゃんではなく、彗ちゃんだった。
彗ちゃんが留学に行く前だったら、彗ちゃんに引き止めてもらえるなんて、夢みたいなことなのに。
嬉しすぎて頬が赤くなってしまうだろうことなのに。
なのに。
頭の中で溢れているのは、彗ちゃんじゃなくて。
「……っ、桜ちゃんのばか…」
駆け出した足は止まることなく桜ちゃんから離れていく。
ねえ、桜ちゃん。
桜ちゃんは今どこ見てる?
私の後ろ姿見ていたり、する?
……なんてね、そんなわけない。
期待しない方がいいんだ。