真面目で冷淡な彼が豹変するとき
そしてその日の放課後も図書室で、中邑くんとみっちりお勉強。
図書室は私たち以外誰もいなくて、中邑くんは普通の声のトーンで話す。
相変わらず中邑くんの言葉は冷たくて厳しい。
「だから、ここにこれを使うって言ってるじゃないですか。何回言ったら分かるんですか?」
「う、うう……。ゴメンナサイ……。こ、こうだよね」
「そうです。それからどうするんでしたっけ?」
「えっと、これをこうして……」
それでもスパルタ指導のお陰もあって、だいぶ解けるようにはなってきた。
まだ間違えてしまうこともあるけど、どうやったらいいかすら分からなかった昨日に比べたら大きな進歩。
「……っと、こうで、出来た……!」
「そうです。正解。やれば出来るじゃないですか」
問題が解けると、中邑くんが嬉しそうに微笑む。
その笑みにドキッと胸が鳴る。
……なんて優しい笑顔なんだろう。
飴とムチみたいなものなのか、その笑みを見るためにどんなに厳しくても頑張れているような気がする。
胸の高鳴りがうるさい。
普段見られない中邑くんの笑顔が、私にだけ向けられているのかと思うと、すごく嬉しくなっちゃう。