真面目で冷淡な彼が豹変するとき
「じゃあ、今日はここまでにしましょう。明日は数学をやりますから」

「昨日今日で大分解けるようになったよ。中邑くんのお陰だね、ありがとう!じゃあ、また明日も……」

「そうだ、先輩」

机に広げた教科書とノートを片付けながら、「また明日もよろしくね」と言おうとした時、その言葉を遮るように中邑くんが話す。


「連絡先、教えてください。帰ってからも勉強するんでしょう?もし分からないところがあったら、連絡くれれば教えますから」


「……へ?」


……驚いた。


正直、栞にああ言われてから、聞いた方がいいんじゃないかと、少し迷ってた。

だけど言うタイミングも勇気もなくて、言い出せずにいたのに。


まさかこんな簡単に、しかも中邑くんのほうから言ってくるなんて。



中邑くんは携帯を手に持ち、早く出せと言わんばかりに携帯をゆらゆらと揺らす。

そんな状況で教えない訳にもいかないから、ノートをカバンにしまい、携帯を取り出した。



交換の最中、ずっと胸の高鳴りがうるさくて。

何故か緊張していて、手が小さく震えていた。



……なんだろう、私、ヘン。

どうしてドキドキが止まらないの?


勉強のために連絡先を交換しただけなのに。

ただそれだけなのに。


なんでこんなに嬉しいんだろう。

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