真面目で冷淡な彼が豹変するとき
それからどのくらい時間が経っただろう。

私は相変わらず英語と格闘を続けている。


単語は覚えるだけでいい。だけど文法はそうもいかない。

私は頭を抱えてうなだれた。


……どうしてこうも勉強が出来ないんだろう。

追試で合格しなきゃ、進級が危ないってのに。

気持ちだけが焦って、覚えたところも出来なくなってしまう。


「……何をそんなに悩んでるんです?」

そんなとき、私の頭の上からそう声が降ってきた。

見上げるとそこには、あの中邑くん。


間近でみる綺麗で整った顔に、ドキッと心臓が跳ねた。


「え?あ、あのちょっと上手く覚えられなくて」

「ふーん……。文法?ちょっと見せてもらえます?」

そう言って机にある教科書とノートを見た。

「この程度なら僕にも分かりますよ。もし良かったら教えましょうか」

「えっとでもこれ二年生の……」

「もう二年の勉強してるんで、別にこのくらいどうってことないです」



< 4 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop