真面目で冷淡な彼が豹変するとき
――それから一時間ほど、中邑くんにみっちりと教えてもらう。
教え方は確かに上手い。
何回読んでも分からなかった部分が、すとんと身体に入ってくるように理解出来る。
……だけど。
「こんな基本中の基本、分かってなかったらこの問題解けるワケないじゃないですか」
「これは中学校でやってますよ。中学校の勉強からやり直した方がいいです」
と、グサグサ心に刺さるような厳しい言葉が投げつけられる。
……正直、泣きそうになる。
でも、不思議な事に教えてもらいたくないと思わなくて。
多分きっと、私が問題を解けるようになった時にふと覗かせる、中邑くんの笑顔。
それを見ちゃうと、自然と心が温かくなってしまうんだ。
「……今日はここまでにしましょうか」
中邑くんは図書室の時計を見て、そう言った。
気付けばもう7時を過ぎている。
外はもう真っ暗になっていて、学校の暖房も切られてて少し肌寒くなっていた。
これで終わりらしい。
ホッとした半面、少し寂しくなる。