家族じゃなくなった日。
「おはようございます!」
「おはよう!優香ちゃん今日も可愛いね♪」
「もうっ、やめてくださいって!」
立花さんと挨拶すると決まっていつも同じ返事
。
彼なりの私の緊張ほぐしで言ってくれている。
けど、少し返事に困る。
私はデスクについて昨日の仕事の続きに取りかかる。
…と、違和感を感じる。
辺りを見回すと、向かいのデスクの上のダンボールが1つ増えていた。
そして、よく見ると黒い髪と光に反射した眼鏡が見える。
「あらぁ〜!藤田くん、もう帰ってきてたのねぇ〜‼︎」
「あ、佐藤さん。おはようございます。あっ、あと、これいつもお世話になっているお礼です。」
そう言うと彼は4段目のダンボールから桜色の袋を取り出す。
「佐藤さんの好きなマカロンです。」
「あらあらまぁまぁ!ありがとう‼︎早速、今日頂いちゃうわね♪」
「喜んでもらえてよかったです。」
マカロンを頂いて片手を頰に重ねているところで、私は佐藤さんと目が合う。
「おはようございます。」
「優香ちゃんおはよう!」
私は藤田さんの方を見た。
「あの方が藤田さんですか?」
「そうそう。あ、そういえば優香ちゃんは藤田くんと初対面だったわよね?藤田くん、こちら山本優香さん。藤田くんがいない時に入ってきた新入社員よ、仲良くしてあげてね!」
「わかりました。」
「山本優香です、よろしくお願いします!」
「藤田 翔太郎(フジタ ショウタロウ)です。よろしくお願いします。」
彼はそう言って私の手を握る。
大きな手だった。
背も立花さんより高くて、180㎝はあるだろう。
黒髪と切れ長の目。
スッと通っている鼻立ち。
…要するにイケメンで。
私はまた他の女子社員の目線を感じる。
そこに仕事を中断した立花さんも来る事だから、ますます目線は痛くなった。