家族じゃなくなった日。
兄は気づいているのだろうか?
私の事を。
それとも忘れてるだろうか、もう7年も前の妹の事を。
「あれっ?優香ちゃんメガネなんかしてたっけ?」
突然現れた立花さん。
痛いとこをついてくる。
「あ、少し目が悪いんです。それで、今日はコンタクトするの忘れてきて。」
「ふーん…。…でも、メガネ姿も似合ってるよ!」
右目でウインクして褒めてくれる。
立花さんが鈍い人で良かった。
私はデスクに座り、まとめるよう入れていた書類の整理を始める。
ーーガチャ。
扉が開いた所で、藤田さんだけが帰ってきた。
「天野さんは?」
「知らね。」
そう言うと藤田さんは私の目の前に広がっているダンボールと紙の山のデスクに座る。
ちなみに、ダンボールは5つくらい連なっている。
私はその隙間から藤田さんをこっそりと見た。
立花さんとは違い、クールで冷静沈着なイメージで、きっと疑問に思った事は自分で解決していく人なんだろうと思う。
だから、藤田さんには要注意しなければならない。
兄の仲の良い友達と言うならば、もしかしたら私の話を見聞きしているかもしれない。
悪いけど、藤田さんはこれからなるべく避けるようにしよう。
「おーい、山本〜〜!」
「ーーはい!」
教育係の谷口さんに呼ばれ、私は早歩きで谷口さんのデスクへ向かう。
すると、厚さ2センチ程の紙の束を渡される。
「山本、この企画書を藤田と一緒に仕上げてこい。」
「……藤田さん、ですか?」
「そうそう。お前の目の前のデスクに座ってる奴だよ!…じゃあ、よろしくな。」
言う事言うと、谷口さんは若い女性社員の入れたコーヒーにミルクを隠れながら3つも入れて、ついでに砂糖も2袋入れて飲む。
「ん〜っ!やっぱりコーヒーはブラックだよなぁ〜〜。」
どうしようもない人だ。
神様は意地悪。
さっき決めたばっかりなのに、それを容易く切り刻む。
とりあえず私は藤田さんの所へと向かう。
「失礼します。……えっと、谷口さんからこの企画書を一緒に仕上げろって言われました。」
「…………そう言えばそうだっけ。」
そう言うと、机の上から下から3つ目のダンボールを取り出し書類を取り出して、クリップでまとめるとそのままカバンに入れる。
「行くぞ。」
「え、…ーーちょ、ちょっと何処行くんですか⁉︎」
「早くしろ。」
「うぁあ、は、はい!!」
藤田さんは椅子から立ち上がり、部屋から出る。
私もその後を追いかけて手に持っていた企画書とその他もろもろをカバンに入れては走り出した。